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緩和ケアの概要

生活の質向上のために、がんと診断された時から受けられる「緩和ケア」とは

目次

  1. 身体の痛み以外にも対応する緩和ケア
  2. 緩和ケアは患者か否か、年齢に関係なく提供される
  3. 早期から緩和ケアを取り入れる時代
  4. 緩和ケアを受ける前に知っておきたい「基本的緩和ケア」と「専門的緩和ケア」
  5. 緩和ケアを受けるには
  6. 緩和ケアとお金
  7. まとめ

がん患者さんをサポートする緩和ケアチーム

「緩和ケア」という言葉を聞いた際、どのようなことをイメージしますか。治療ができなくなった際に受けるものというイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか。緩和ケアは、生活の質(Quality of Life、 QOL)向上のため、がんと診断された際から受けられるものです。今回はこの緩和ケアの概要や、緩和ケアが受けられる医療機関の種類などをご紹介します。

身体の痛み以外にも対応する緩和ケア

緩和ケアは、以下のように定義されています。

緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002年)」定訳(日本緩和医療学会HPより引用)

 

【緩和ケアが対象とする苦痛の例】

・痛みや咳などの身体的な症状

・こころのつらさや抑うつなどの精神的な症状

・就労の問題や療養場所の確保などの社会的問題

・人生の意味や目的に関するスピリチュアルな苦痛

緩和ケアは患者か否か、年齢に関係なく提供される

緩和ケアは、がんと診断された患者さんだけでなく、患者さんのご家族(ご遺族)、医療従事者も対象とします。

WHOの定義にもあるように、緩和ケアの対象となる病気はがんだけではありません。「生命を脅かす病」であれば、がん以外でも緩和ケアの対象となります。

年齢についても、小児やAYA(Adolescent and Young Adult)世代と呼ばれる思春期から30歳代も含め、あらゆる世代が対象となります。大人だけに提供されるものではありません。

早期から緩和ケアを取り入れる時代

緩和ケアは、病気と診断されたときから早期に取り入れることが推奨されています。

がんの場合、日本では「がん対策基本法」や、厚生労働省策定の「がん対策推進基本計画」に基づき、がんの診断時から患者さんとそのご家族に対して、QOLの向上を目指して、医療従事者が緩和ケアを提供することを推進しています。

がんの終末期に、延命ではなく、痛みを取り除いたり精神的苦痛を和らげたりすることを主な目的として行う緩和ケアの一種「ターミナルケア」が緩和ケアのすべてだと思われることがありますが、緩和ケアは診断後、どのタイミングでも受けられるものです。

ですから、がんと診断された後、治療を始める前でも、必要に応じて緩和ケアを受けることができます。

また、治療が入院や通院、在宅療養などどのようなかたちであれ、緩和ケアを受けることができます。

がんと診断された直後、ショックで眠れなくなったり食事ができなくなったりという場合は、精神的な症状をやわらげたり解消したりするために。治療と仕事の両立に不安を覚える場合には、その社会的問題に対応するために。これらの苦痛や悩みは、緩和ケアの対象です。身体的な症状がなくても、こうした苦痛や悩みに対応するため早期に緩和ケアを受けることで、QOLの向上が見込まれます。

緩和ケアを受ける前に知っておきたい「基本的緩和ケア」と「専門的緩和ケア」

緩和ケアは、がん患者に関わるすべての医療従事者によって提供されるべきものとされています。がん診療連携拠点病院などでは、そのための研修も実施されています。

研修を受けるなどした担当医や担当看護師らが提供する緩和ケアは「基本的緩和ケア」と呼ばれています。

ただ、基本的緩和ケアでは苦痛や悩みに十分対応できないケースも現実として存在します。

そうした場合行われるのが、「専門的緩和ケア」です。

専門的緩和ケアとは、専門的な知識や技術を持って行うケアのことで、緩和ケア医、緩和ケアチーム、麻酔科医、腫瘍内科医、放射線治療医、精神腫瘍医などの専門家によって提供されます。

緩和ケアを受けるには

「緩和ケアを受けたい」と思ったときは、まず現在かかっている医療機関で緩和ケアが受けられないか担当医に確認します。担当医や、かかっている医療機関の担当医以外の医療従事者が対応できる場合は、治療などと並行して緩和ケアも同じ医療機関で受けられます。

ただ、苦痛や悩みの内容、現在かかっている医療機関の体制によっては、「専門的緩和ケア」が可能なほかの医療機関に移る必要も出てきます。

その際、病状や患者さんの希望にあわせて、大きくわけて入院、通院、在宅療養の三つの中から選択します。

入院の場合は、緩和ケアに特化した「緩和ケア病棟」、通院の場合は、専門知識を有する医師や看護師が在籍する「緩和ケア外来」が主な選択肢となります。

在宅療養の場合、担当医に紹介状を書いてもらい、訪問診療などの手続きを行う必要があります。すべての訪問診療などの現場に、専門的緩和ケアを提供できる医療従事者がいるわけではないので、対応可能なサービス提供元を探す必要もあります。

緩和ケア病棟、緩和ケア外来、専門的緩和ケアに対応した訪問診療のいずれも、地域によっては空きがないといったケースがあります。

専門的緩和ケアを希望する場合はまず、担当医、かかっている病院のソーシャルワーカー、もしくは近くのがん相談支援センターに相談して、患者さんの希望に合致した緩和ケアを受けられる方法を検討することをおすすめします。

緩和ケアとお金

緩和ケアにかかる費用は、入院時の室料差額などを除き、一般の医療と同じように医療保険の対象です。費用がかさんだ場合も、高額療養費制度の対象となりますので、自己負担限度額を超えた分は払い戻しを受けることができます。

また、在宅療養で医療保険、介護保険ともに利用でき、自己負担額が一定を超えた場合は、高額介護合算療養費制度に基づき、申請によって自己負担額を超えた分が支給されます。

患者さんの状況によって、利用できる制度や負担する金額も異なりますので、どれくらいの金銭負担があるのかなど知りたい場合は、かかっている医療機関のソーシャルワーカーや、地域のがん相談支援センターに一度相談するとスムーズです。

また、お住まいの自治体によっては独自の支援制度を設けている場合もあるので、自治体の担当課や社会福祉協議会に問い合わせをしてみるのもひとつの手です。

まとめ

身体の痛みやこころのつらさなどは見た目で判断するのが難しく、その人が今緩和ケアを必要としているか、周囲からは判断がつかないケースも多々あります。痛みやつらさ、不安を感じた際は、担当医やがん相談支援センターなどで相談してみてください。声を上げることが、緩和ケアにつながるはじめの一歩となります。

 

【参考資料】

診断時の緩和ケア(厚生労働省)

がんとわかったときから はじまる緩和ケア(特定非営利活動法人日本緩和医療学会)

国立がん研究センターがん情報サービス

※いずれもクリックすると外部サイトに遷移します

Hatch Healthcare K.K.

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