がん治療における先進医療とは
先進医療は「最高の医療」という意味?
「先進医療」という文字だけを見ると、最先端で効果も高い、いわば現時点における最高の医療であるように感じるかもしれません。しかし、「先進医療」は、高度な医療技術ではあるものの、「標準治療」とまでは言えず、保険適応にできない研究的な技術です。
「先進医療」の中でも、未承認なものは、原則として、「臨床試験」として行われ、厳密な審査が行われ、有効性が証明されれば、「標準治療」として、保険適応になります。「先進医療」で実際に有効性が証明され、保険適応となったものは、6%とされていますので、このことからも、やはり「先進医療」はまだまだ研究的な治療と言えます。
厚生労働省が認める「先進医療」は、「標準治療」とするのに必要な信頼性の高いデータが不十分な治療法で、治療に関わる費用はすべて患者の自費負担になるもの(保険外診療)です。
先進医療では、医療技術ごとに対象となる疾患・症状、および実施する医療機関が限定されているため、先進医療を受けたい時は医療機関(病院)を変えなければならない場合もあります。
また、毎年約100種類の治療法が先進医療に指定されますが、報告をもとに年ごとに専門家によって評価され、保険が適用される標準治療になったり、逆に認定が取り消されたりしていますので、前年とは異なっている場合もあります。先進治療を受けたい場合には、下記の該当ページなどでよく調べることをお勧めします。
先進医療の技術や実施医療機関などについて詳しくは厚生労働省「当該技術を実施可能とする医療機関の要件一覧及び先進医療を実施している医療機関の一覧等について(外部サイト)」を参照してください
先進医療を受ける場合にかかる費用
先進医療でかかる費用について、全額自己負担と書きましたが、正確には「技術料」は自己負担ですが、それ以外の診察代、投薬代、入院費などは、通常の治療と同じように、公的医療保険が適用されます。
「先進医療」には、中には数百万円もの自己負担費用がかかるものがありますが、民間企業のがん保険の中には「先進医療特約」がついているものもあります。この特約は、先進医療を受けた時に一定の範囲内でかかった技術料を実費補填する保障なので、確認しておくといいでしょう。
【参考文献】
「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社)
厚生労働省 先進医療の概要について(外部サイト)
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- 監修者
- 勝俣 範之
- 医師・がん薬物療法専門医 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授
1963年山梨県富士吉田市生まれ。1988年富山医科薬科大学医学部卒業後、徳洲会病院で内科研修、国立がんセンター(現:国立がん研究センター中央病院)で、レジデント、チーフレジデント、内科スタッフ、医長を歴任。腫瘍内科学の推進、啓発、教育に従事。研究面では、婦人科がん、乳がんの薬物療法の開発、臨床試験に携わる。2011年10月より、20年間務めた国立がん研究センター中央病院を退職し、日本医科大学武蔵小杉病院で、腫瘍内科を立ち上げた。診療・教育・研究の他、がんサバイバー支援にも積極的に取り組んでいて、正しいがん情報の普及を目指して、ブログ、ツイッター、フェイスブックを通し、情報発信している。近著に「医療否定本の嘘」(扶桑社刊)、「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社刊)がある。 所属学会:日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本内科学会、American Society of Clinical Oncology