がんの「病期(ステージ)」とは
がんの病期(ステージ)とは何を意味するのか
がんが見つかった時、医師からは「がんの種類」とともに「がんのステージ(「病期」ともいいます)」を教えてくれるはずです。
ステージは、がんの広がりや進行の程度、症状などを示す「指標」で、がんの治療にとってとても重要なものです。
最も治療効果が高く、からだの負担が少ない治療を選択するために、医師も患者もこのステージを目安にして、どのような治療を行っていくかをおおまかに決めていきます。
具体的には、ステージによって下記のようなことがわかります。
①これからのがんの進行や見通しについて
②治療実績やその効果について
③治療の効果や副作用の予測
④治療法の選択
⑤他の患者さんとの病状の違いを比較
自分のがんのステージをよく理解することが、適切な治療方法を選ぶことの助けになります。
ステージはがんの種類によって異なる
がんのステージはがんの種類によって異なっていますが、国際対がん連合(UICC= Union for International Cancer Control)によって、「TNM分類」という国際規格で定められています。
TNMはそれぞれ「T(tumor):腫瘍の大きさ」「N(nodes):リンパ節に転移したか」「M(metastasis):遠く離れた部位に転移したか」を表しています。
ステージはI〜IVまで4段階あり(0〜IVまで5段階とする場合もあります)、I→II→III→IVと数字が大きくなるに連れて、がんが進んでいることを表します。一般的に、ステージIとIIを「早期がん」、ステージIIIとIVを「進行がん」と呼びます。
ステージの定義はがんによって異なりますが、おおよそ下記のようになります。
ステージI:がんは小さくとどまっている。リンパ節に転移していない。
ステージII:がんがやや大きいか、小さくてもリンパ節へ転移しかけている。
ステージIII:がんが大きくリンパ節へ転移している。
ステージIV:がんが他の臓器へ転移している。
たとえば、乳がんの場合、ステージI・IIでは乳房やその周辺にがんが散らばっているのに対し、ステージIIIは腫瘍が大きくなり、近接したリンパ節に転移しています。ステージIVでは肝臓など乳房から離れた臓器に転移している状態です。
進行が速いがんも多いため、定期的に検査を受けていても見つかった時にはステージIVだったということが起こりえます。
ステージによって治療方針が決められる
がんのステージが決まると、これまで蓄積してきた医学的データにより、治療方針が決められます。
ステージIやIIでは、主に局所治療である手術や放射線治療を行い、ステージIIIやVIになると、局所治療に加えて、全身治療である抗がん剤治療を組み合わせます。さらに、ステージIVでは抗がん剤治療が主体になります。
ただ、実際に手術・放射線治療・抗がん剤治療をどのように組み合わせるかは、がんのステージだけではなく、患者さんの年齢や合併症、肝機能や腎機能などの個別の状況に合わせて変わります。患者さんに使用できる治療法のうち、科学的にもっとも効果が期待できる治療法を専門医らが協議して決めていくことになります。がんの専門医には、外科医、腫瘍内科医、放射線治療医、放射線診断医、緩和ケア医、精神腫瘍医などがおり、がん診療連携拠点病院では、こうした医療専門家や、必要に応じて薬剤師、看護師、栄養士、 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士(医療ソーシ ャルワーカーなどの多職種スタッフが参加する「キャンサーボード」という意見交換や共有・検討・確認を行う場を設けています。また最近は拠点病院以外でも、同じような取り組みをしているところがでてきています。
【参考文献】
「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社)
国立がん研究センターがん情報サービス「がんの病期のことを知る」(外部サイト)
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- 監修者
- 勝俣 範之
- 医師・がん薬物療法専門医 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授
1963年山梨県富士吉田市生まれ。1988年富山医科薬科大学医学部卒業後、徳洲会病院で内科研修、国立がんセンター(現:国立がん研究センター中央病院)で、レジデント、チーフレジデント、内科スタッフ、医長を歴任。腫瘍内科学の推進、啓発、教育に従事。研究面では、婦人科がん、乳がんの薬物療法の開発、臨床試験に携わる。2011年10月より、20年間務めた国立がん研究センター中央病院を退職し、日本医科大学武蔵小杉病院で、腫瘍内科を立ち上げた。診療・教育・研究の他、がんサバイバー支援にも積極的に取り組んでいて、正しいがん情報の普及を目指して、ブログ、ツイッター、フェイスブックを通し、情報発信している。近著に「医療否定本の嘘」(扶桑社刊)、「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社刊)がある。 所属学会:日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本内科学会、American Society of Clinical Oncology