がんについて知る

がん治療の概要

そもそも「がん」とは

目次

  1. 「がん」って、どんな病気?
  2. 「がん」の特徴とは
  3. 「がん」にはどんな種類があるのか


「がん」って、どんな病気?

日本では2人に1人ががんになるといわれ、男性では約65.5%が、女性では約50.2%ががんになります(2017年および2018年のデータ「国立がん研究センターがん情報サービス」より)。

そもそもがんとは、医学的には悪性腫瘍(あくせいしゅよう)が生じた状態、またはその腫瘍のことをいいます。腫瘍というのは、「できもの」のことで、細胞が不正常に増殖した状態のことです。「悪性」というのは人間に悪さをすることで、「悪性」があるということは「良性」もあります。その違いについては、次の「がんにはどんな特徴がありますか」で説明します。

研究により、がんの原因(発がん性)が明らかになってきたことで、がんになる原因を避けること(予防)は、ある程度できるようになってきました。たとえば、禁煙すること、食生活の見直し、運動不足解消、ピロリ菌の除去などによって、がんに「なりにくくする」ことは可能です。しかし、それでもがんになることを完全に防ぐことはできません。

それは、がんが「遺伝子が傷つくこと」によって起こる病気だからです。しかも、その傷がつくのは一瞬ではなく、長い時間と様々な要因が複雑に関係しているため、何が引き金になるかを各個人で特定することは困難です。また、がんは患者さんの体内の臓器から臓器にうつることはありますが、伝染病ではないので、人から人にうつることはありません。

がんの治療については、長い間世界中の研究者が研究し続けており、年々目覚ましい進歩を遂げています。ですから、現在ではがんは治すことができる病気です。がんについての正しい知識を持ち、それぞれの病期に応じた正しい対応があることを理解して、前向きに治療を進めていきましょう。

「がん」の特徴とは

がんは、勝手に増殖を続ける「自律性増殖」、周囲に広がるとともにまったく異なる場所に移る「浸潤(しんじゅん)と転移(てんい)」という2つのやっかいな特徴を持っています。このことが、がんが人体に大きなダメージを与える理由です。

「自律性増殖」とは、細胞が勝手に無制限に増殖する性格をもつことです。正常な細胞は、ある程度大人になると成長が止まり、細胞数や臓器としての機能を保つために細胞が分裂・増殖し過ぎないように制御されています。ところが腫瘍ではこの制御機能が働かず、勝手に増殖してしまいます。

さらに、がんには「浸潤」と「転移」という特徴があります。「浸潤」とは、がん細胞が発生した場所(原発巣(げんぱつそう))で増殖すると同時に、周囲の臓器や細胞を壊しながら水がしみ込んでいくように入り込み、広がっていくことです。一方、「転移」はがん細胞が周囲の血管やリンパ管に入り、血液やリンパ液によって流れ着いた場所に定着して増殖し、広がることをいいます。

この「浸潤」と「転移」が悪性腫瘍の特徴で、良性腫瘍との大きな違いです。良性腫瘍は「浸潤」や「転移」を起こすことはなく、外科的な手術で取ってしまえば再発することはほとんどありません。悪性腫瘍の場合は目に見えない小さながん細胞が体中に転移している可能性があり、これが治療を難しくします。がんの治療にとって早期発見が重要とされる理由の1つは、「浸潤」と「転移」が起こる前に治療を始める方が治療が容易だからです。

「がん」にはどんな種類があるのか

がんは、大きく次の3つにわけられます。

①「上皮細胞から発生するがん(がん腫)」
「上皮細胞」とは、体の表面や臓器の表面を形作る細胞のことです。人間はある程度大人になると細胞も成長を止め、それぞれの場所でそれぞれの役割を担うようになります。ある臓器がほかの臓器になるようなことはありません。

成長しきった臓器では、古い細胞と新しい細胞が入れ替わる新陳代謝だけを行うようになりますが、体の中では新陳代謝の活発な場所とあまり活発でない場所があり、「上皮」と呼ばれる場所はこの新陳代謝が比較的活発な場所です。こうした場所では細胞分裂が活発に行われるため、遺伝子に傷がつきやすく、がんが発生しやすいのです。このため、すべてのがんのうち約80%以上が上皮で発生しています。

上皮から発生するがんの代表的なものには、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、喉頭がん、咽頭がん、舌がんなどがあります。上皮から発生するがんは「がん腫」と呼ばれます。

②「非上皮性細胞から発生するがん(肉腫)」
「非上皮性細胞」とは、筋肉や骨のことで、ここで発生するがんは「肉腫」と呼ばれます。代表的な肉腫には、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫などがあります。非上皮性細胞から発生するがんは、がん全体の約1%と、極めてまれながんです。

③「造血器から発生するがん(血液がん)」
「造血器」とは、血液をつくる臓器のことで、骨髄やリンパ節のことで、「血液のがん」や「血液がん」と呼ばれます。血液をつくる臓器では、細胞分裂が活発に行われているため、遺伝子に傷がつきやすく、がんが発生しやすい場所です。代表的なものに、白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫などがあります。

【参考文献】
国立がん研究センター がん情報サービス「がんの基礎知識」(外部サイト)
※ 別ウィンドウで開きます

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監修者
勝俣 範之
医師・がん薬物療法専門医 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授

1963年山梨県富士吉田市生まれ。1988年富山医科薬科大学医学部卒業後、徳洲会病院で内科研修、国立がんセンター(現:国立がん研究センター中央病院)で、レジデント、チーフレジデント、内科スタッフ、医長を歴任。腫瘍内科学の推進、啓発、教育に従事。研究面では、婦人科がん、乳がんの薬物療法の開発、臨床試験に携わる。2011年10月より、20年間務めた国立がん研究センター中央病院を退職し、日本医科大学武蔵小杉病院で、腫瘍内科を立ち上げた。診療・教育・研究の他、がんサバイバー支援にも積極的に取り組んでいて、正しいがん情報の普及を目指して、ブログ、ツイッター、フェイスブックを通し、情報発信している。近著に「医療否定本の嘘」(扶桑社刊)、「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社刊)がある。 所属学会:日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本内科学会、American Society of Clinical Oncology