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肺がん

肺がん治療後の療養生活と経過観察

目次

  1. 手術後はリハビリテーションが必要なことも
  2. 治療後の日常生活で気をつけることは?
  3. 治療後に必要な検診について


手術後はリハビリテーションが必要なことも

肺の手術をすると、肺の容量が減ったり呼吸がしにくくなったりすることがあります。そのような呼吸機能の低下や肺炎を予防する目的で手術の前後にリハビリテーションを行うことがあります。

リハビリテーションでは腹式呼吸の訓練などを行います。健康な人の場合、呼吸運動の約8割を横隔膜が担うと言われますが、手術後は息を吸う際にうまく力を発揮できなくなります。
そこで手術前から腹式呼吸を意識して横隔膜を鍛えるようにするのです。

呼吸機能がかなり低下している患者さんには、呼吸機能回復訓練用の器具を使ってトレーニングすることもあります。

治療後の日常生活で気をつけることは?

経過観察中は不安のよぎる瞬間があるかもしれませんが、睡眠や食習慣に気をつけ規則正しい生活を送って気持ちも整えていきましょう。喫煙の習慣がある人は、治療後肺炎になるリスクを下げるためにも禁煙することが重要です。1人で禁煙するのは難しいという場合は病院やクリニックにある「禁煙外来」で相談してみるといいでしょう。

運動をしてよいかどうかは、治療後のからだの状態や体力などによって一人ひとり違います。まずは担当医に相談してみてください。通常は、体力が落ちると、生活状況も変化するため、無理のない範囲でからだを動かすことで体力の回復が期待できます。散歩などの有酸素運動は呼吸機能のアップにも有効なので、治療前に運動習慣がなかった人も取り入れるとよいでしょう。

仕事への復帰は、オフィスワークなら退院から1カ月後、肉体労働を伴う場合には3カ月後が目安となります。あなたにとって働くということは経済的な理由はもちろん社会とつながる手段でもあるはずです。無理はいけませんが家族や患者会、職場と連携してあなたが希望する働き方を実現していきましょう。治療後の仕事復帰については「がんの治療と仕事の両立」もご覧ください。

また、性生活に支障はありませんが、妊娠はからだの負担が大きいため治療中は避妊をします。抗がん剤などを使うと生殖機能に影響が出ますので、子どもが欲しいと考えている場合には、治療前から担当医と相談しておくと良いでしょう。

治療後に必要な検診について

肺がんの手術を受けた患者さんは、回復状況を確認するためしばらくは月1~2回の頻度で通院します。状況にもよりますがおおよそ4か月後から、1カ月に1度、2カ月に1度といった形で通院頻度を下げていきます。

体力が十分に回復したら今度は再発チェックを目的とした定期検査をおおよそ4~6カ月に1回のペースで行います。手術後2~3年経った頃を境に再発率は低くなると言われていますが、根治の目標である5年間は定期検査を実施していきます。
定期検査では、尿検査、腫瘍マーカー、X線検査、CT検査などから治療による副作用や再発などの有無と体調の確認を行います。

薬物療法や放射線治療を行った場合も、手術と同じような流れで治療後の経過観察を行います。特に、放射線治療の場合には治療終了後数か月経って咳や息苦しさを感じる肺線維症などの副作用が現れることがあります。

患者さんによっては、その症状を副作用だと気づけないこともあるようです。気になる症状が出て医療機関を受診する際には放射線治療を受けていたことを伝えるようにしましょう。その際、どのような放射線治療を受けたのか治療期間や放射線量の記録があると診察時に役立ちます。

薬物療法の場合には治療が長期間にわたることも少なくありません。その間、治療効果が出るかどうか、副作用とどう付き合っていくのかなど、不安でつらい気持ちになることもあるでしょう。そうした時は、1人で悩みを抱えず家族など身近な人や、同じ病気を経験している患者会の仲間と気持ちをわかちあいながら進んでいきましょう。

不安を感じる場合は「メンタルケアについて知る」「治療中の相談先」を読んでみてください。

【参考文献】
「国立がん研究センターの肺がんの本」(小学館)
「患者さんのための肺がんガイドブック 2019年版」(金原出版)
国立がん研究センター がん情報サービス 肺がん(外部サイト)
※別ウインドウで開きます

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監修者
矢野 和美
看護師:がん看護専門看護師 国際医療福祉大学大学院がん看護学領域 教員 認定NPO法人 マギーズ東京 キャンサーサポートスペシャリスト

福岡県出身。看護師経験20年以上。 2008年修士課程にてがん看護学を学んだ後、がん看護専門看護師の認定を受ける。 その後博士課程にて政策学を学ぶ。専門分野はがん薬物療法、緩和ケア、就労支援など。