がん患者のセカンドオピニオン
セカンドオピニオンとは
現代の医療では医師とよく話し合い、患者さん本人が十分に納得してから治療することが求められています。そのため、最初に診断した医師の言うことに少しでも疑問や不安を覚えたり、別の角度から検討したくなったりした時に、ほかの医師の意見も聞いてみたいと思うのは普通のことです。
このような場合に主治医(担当医)以外の医師の意見を聞くことを「セカンドオピニオン」といいます。
以前は担当医を信用していないと思われたら申し訳ないという思いから、言い出せない人もいましたが、医師も患者に納得してもらってから治療を受けてもらうのが理想なので、むしろ積極的にセカンドオピニオンを勧める医師も増えています。希望する場合は遠慮なく「セカンドオピニオンを聞きたい」と言って大丈夫です。後悔がないようにあなたの思いを最優先に考えましょう。
だし、セカンドオピニオンには保険が効きませんので、費用は自己負担となります。
現在のがん治療は、ガイドラインに基づいた「標準治療(現時点で最も効果が期待でき、安全性も確立した治療)」が基本的に行われますので、セカンドオピニオンを求めても治療方法が大きく違うことはほとんどないかもしれません。
ただ、標準治療といっても、複数の標準治療があることもあり、また、個人の年齢や、合併症などにより、標準治療をどうやってあてはめていくのかは、個人差もあります。その場合には、治療の選択は、主治医によっても見解が異なることがあります。ご自身の治療に納得をして治療を受けるためにも、セカンドオピニオンは積極的に考えてもよいと思います。
診断を受けてから治療のための入院までは、1週間から5週間くらいかかることあるので、この間にセカンドオピニオンを聞いてみるのもいいでしょう。
注意しなければいけないのは、セカンドオピニオンを聞くのは医師を変更するためではないということです。あらかじめ他の病院での医師の治療を希望するならセカンドオピニオンではなく「転院」または「転医」ということになります。転院や転医を希望する場合は、正直に話して紹介状を書いてもらってよいと思います。
セカンドオピニオンを受けるには
セカンドオピニオンを受ける場合、最初に診断した医師の「紹介状(正式名:診療情報提供書)」と「検査結果(画像診断のコピーを含む)」を持っていく必要があります。
手順はおおよそ次のようになります。
①セカンドオピニオンを受ける病院を探す
②現在の医師にセカンドオピニオンを受けたい旨、どこの病院で受けたいかを伝え、紹介状を書いてもらう
③セカンドオピニオンを受ける病院に電話し、予約する
④セカンドオピニオンを受ける
⑤現在の医師に結果を報告する
セカンドオピニオンを受ける病院を探す時に大切なのは、あなたと同じ種類のがんの治療実績の豊富な病院を探すことです。治療実績の多い病院は、それだけ経験とノウハウがあり、さまざまな可能性について説明してくれます。可能なら医師名も調べておきましょう(医師名がわからなくても受診できます)。病院の心当たりがない場合には現在の医師に相談してもいいですし、医師に相談しにくい場合には「がん相談支援センター」に相談しても大丈夫です。
厚生労働省が指定する「がん診療連携拠点病院」では多くの場合、「セカンドオピニオン外来」を設けているので、利用するといいでしょう。
セカンドオピニオンを受ける際には、ただ漠然と話を聞くのではなく、自分の状況(どのような検査をしたか、医師からどのように言われたか)を整理し、質問したいことなどをメモにまとめておきましょう。また、1人では気が動転し、聞きたいことも聞けない場合があるので、できれば信頼できる人に同行してもらうことも大事です。できれば、会話を録音させてもらうとよいでしょう。
がんの治療は長期間に及ぶことが多いため、交通の便や病院の周辺環境、病院で出される食事、病室の雰囲気、医療スタッフの対応など、さまざまな要素が気になるものです。セカンドオピニオンを受けると、治療の前にこうしたことを確認できるというメリットもあります。
再発・転移が分かってからのセカンドオピニオン
がんの再発・転移が分かった場合も、これからの治療方針を決めるのに、セカンドオピニオンを受けることが適切な場合があります。再発・転移したがんは最初に発生したがんよりも対処が難しいこともあるので、より多くの知見や経験が要求されるからです。
そのため、セカンドオピニオンについても、あなたと同じ種類のがんについて専門的に研究している医師や病院を探すことが必要です。また、そのがんについての最新治療について、治験を行っている病院を受診することを検討することも選択肢として考えられます。まず、主治医に相談してアドバイスを受け、周囲の医療関係者や「がん相談支援センター」にも相談するとともに、インターネットなどで適切な情報を集めましょう。
【参考文献】
『がん患者・家族からの質問―担当医としてこのように答えたい』(へるす出版)
国立がん研究センター がん情報サービス(外部サイト)
静岡県立がんセンター(外部サイト)
※別ウインドウで開きます
- 監修者
- 勝俣 範之
- 医師・がん薬物療法専門医 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授
1963年山梨県富士吉田市生まれ。1988年富山医科薬科大学医学部卒業後、徳洲会病院で内科研修、国立がんセンター(現:国立がん研究センター中央病院)で、レジデント、チーフレジデント、内科スタッフ、医長を歴任。腫瘍内科学の推進、啓発、教育に従事。研究面では、婦人科がん、乳がんの薬物療法の開発、臨床試験に携わる。2011年10月より、20年間務めた国立がん研究センター中央病院を退職し、日本医科大学武蔵小杉病院で、腫瘍内科を立ち上げた。診療・教育・研究の他、がんサバイバー支援にも積極的に取り組んでいて、正しいがん情報の普及を目指して、ブログ、ツイッター、フェイスブックを通し、情報発信している。近著に「医療否定本の嘘」(扶桑社刊)、「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社刊)がある。 所属学会:日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本内科学会、American Society of Clinical Oncology