がんについて知る

治療選択の考え方

がん治療のチーム医療とは

目次

  1. 最近増えてきているチーム医療とは
  2. どのような専門職が関わるの?
  3. 医師・専門家以外のチームメンバー


最近増えてきているチーム医療とは

少し前までは、担当医1人が中心となってがんの治療を行うことが一般的でした。しかし最近は担当の医師だけでなく、複数の医療専門職が連携して患者さんの治療や支援を行う「チーム医療」を行っている病院が増えています。

チーム医療には2つの形があります。1つは医師同士のチーム、もう1つは医師と多職種の専門職で形成されるチームです。

チーム医療では、専門職が1つになって治療に当たります。定期的に会議などを行って情報交換をしながら、患者さんにとって何がベストかをあらゆる面から話し合い、実行します。このような、診療科の垣根を越えてがん患者さんの治療について考える検討会のことを「キャンサーボード」といいます。専門家が集まり、個々の患者さんにとって、どのような治療が最善かを皆で検討する会議です。

情報を全員で共有することで理解も深まりますし、患者さんや医療スタッフも、何度も同じことを説明する必要がないなど、負担も軽減されます。

このように、はっきりと「チーム医療」という形を取っていない病院でも、もちろん必要に応じて専門職が連携して患者さんの治療にあたっているのが一般的です。

チームを構成するメンバーは多岐にわたります。たとえば医師。最初に診察した医師だけでなく、細胞や組織の検査・診断を行う病理医、手術を担当する外科医、麻酔を担当する麻酔科医、放射線治療を行う放射線治療医・診断医、薬物療法を行う腫瘍内科医、痛みのコントロールを行う緩和ケア医、精神的なストレスに対応する精神腫瘍医、術後のリハビリテーションを担当するリハビリテーション医など、多くの医師がいます。また病状に応じて他科の医師も一緒に治療を行うこともよくあります。

どのような専門職が関わるの?

医師以外の医療専門スタッフもメンバーです。専門分野に詳しい看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、歯科医師や歯科衛生士、ソーシャルワーカーや臨床心理士など、それぞれの分野のプロがさまざまな悩みの助けになってくれるでしょう。

また退院後も自宅で療養や治療が必要な場合は、在宅医療の医師や訪問看護師が関わることもあります。患者さんが日常生活を犠牲にせずに最適の治療が受けられるよう、チームのメンバーは心を尽くしています。

ここで医師、看護師以外の専門職スタッフがどんな役割をするのかを簡単に紹介しておきましょう。

・薬剤師
化学療法に用いる薬の種類が増えてきており、処方も複雑になっています。治療が適正に行われるよう、薬の準備や管理をするほか、患者さんへの服薬指導や副作用がでていないかの確認なども担当します。

・理学療法士
手術の後遺症や療養生活で運動機能が低下してしまった時に、それを取り戻すためのリハビリテーションを担当します。

・作業療法士
作業活動を通して、体の機能や食事、入浴、排泄、家事や着替えなどの日常生活の動作を回復・維持するためのリハビリテーションを担当します。

・言語聴覚士
口やのどの手術をしたり、脳腫瘍などによって話しにくくなったりした場合の発声練習や、食べ物が飲み込みにくくなった時の機能回復や維持を図ります。

・管理栄養士
早期回復のための栄養指導を行うほか、食欲がない時、食事が取れない時にどう工夫すればいいか、退院後の食事はどうするかなどのアドバイスをしてくれます。

・ソーシャルワーカー 
主に生活面、たとえば治療費のこと、仕事の悩み、家族の悩みに対応してくれます。また転院や在宅での治療の継続の手続き、公的な制度の申請についての紹介なども担当します。

・臨床心理士
告知を受けたあとのつらい時に話を聞いてもらうなど、治療中の不安や悩み、家族についての悩みに対処するなど、あらゆる心のケアを行います。

医師・専門家以外のチームメンバー

チームに加わるのは医師や医療専門職だけではありません。患者さんも、患者さんの家族も重要なメンバーです。専門職のメンバーはそれぞれの立場から、患者さんにとってどうすることが一番いいのかを考えて話し合いますが、そのためには患者さん本人がどうしたいのか、どんな風に感じているのか、何をして欲しいのかを知らなくてはなりません。

自分にとって最善の医療を受けるためにも、こうしたいという希望だけでなく、不安に思っていることがあるのなら、遠慮しないで主治医や看護師に伝えてみましょう。もし医師や看護師に話しづらいようなら、どの医療スタッフでも構いません。患者さんの声があることで、より良いチーム医療が実現するということを心に留めておきましょう。

【参考文献】
国立がん研究センター がん情報サービス「がんに携わる“チーム医療”を知ろう」(外部サイト)
がんナビ「『チーム医療って何?』の疑問に答えます」(外部サイト)
※別ウインドウで開きます

治療選択の考え方 記事一覧ページへ戻る

監修者
勝俣 範之
医師・がん薬物療法専門医 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授

1963年山梨県富士吉田市生まれ。1988年富山医科薬科大学医学部卒業後、徳洲会病院で内科研修、国立がんセンター(現:国立がん研究センター中央病院)で、レジデント、チーフレジデント、内科スタッフ、医長を歴任。腫瘍内科学の推進、啓発、教育に従事。研究面では、婦人科がん、乳がんの薬物療法の開発、臨床試験に携わる。2011年10月より、20年間務めた国立がん研究センター中央病院を退職し、日本医科大学武蔵小杉病院で、腫瘍内科を立ち上げた。診療・教育・研究の他、がんサバイバー支援にも積極的に取り組んでいて、正しいがん情報の普及を目指して、ブログ、ツイッター、フェイスブックを通し、情報発信している。近著に「医療否定本の嘘」(扶桑社刊)、「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社刊)がある。 所属学会:日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本内科学会、American Society of Clinical Oncology