がんに関する情報の集め方と注意点
最新情報の入手方法
がんと診断されたら、医師やがん相談支援センターに相談するにしても、ある程度の基本知識は持っておきたいと思うのは普通のことです。そうした場合にアクセスしやすいのは、インターネットや書籍、雑誌ということになりますが、ほとんどの人はまずインターネットで検索するのではないでしょうか。
インターネット上にはがんについての膨大な情報があふれていますが、専門家でない限り、どれが正確で信頼に足るものかを判断するのはかなり困難です。まずは科学的根拠に基づいて、がん治療の解説をしているサイトを参照することをお勧めします。
最初に見ていただきたいのは、国立がん研究センターがん対策情報センターの「がん情報サービス」のページです。
国立がん研究センターは、日本の法律である「がん対策基本法(平成18年法律第98号)」で示された「患者・家族・市民のためのがんの情報をつくり、届ける」ために情報発信に力を入れているため、がんの標準治療に関する最新情報が掲載されています。
がんの治療だけでなく、がんができる仕組み、予防、食事や支援制度、さらには統計情報など、がんとそれに関わるさまざまな情報を得ることができます。まず、ここで情報を調べて大枠を把握しましょう。
さらに、総合的ながん情報サイトとしてはキャンサーネットジャパン、米国国立がん研究所「がん情報サイト PDQ日本語版」も参考になります。
抗がん剤や放射線治療についての詳細情報なら、静岡県立静岡がんセンター「処方別がん薬物療法説明書や日本放射線腫瘍学会(一般向け)を見てみましょう。
がん治療時の生活情報については国立がん研究センター中央病院「生活の工夫カード」が参考になります。
がん患者の交流団体(患者会)については全国がん患者団体連合会(全がん連)、がんサバイバー・クラブを参照ください。
(注)
患者会の中には、特定の医療機関への受診や特定の治療方法を強く勧める、といった団体もまれにあります。インターネットでホームページを確認し、その中身をよく吟味することが大事です。資料を取り寄せて活動内容を確認するのもよいでしょう。気が進まない場合には、はっきりと断りましょう。
海外の最新情報を知りたい場合には海外がん医療情報リファレンスが参考になります。
また、がん経験者の多くの方が、ブログや交流サイトなどで自分の体験談を発信しています。患者さんにとって励まされる内容も多いのですが、あくまでも個人の体験であり、すべての人に当てはまるわけではないということを心に留めて置きましょう。
年配の人の中には「インターネットの情報より、書籍の方が信頼が置ける」と思っている人もいるかもしれませんが、がん情報については一概にそうともいえません。
書籍は、「〇〇でがんは治る」などの怪しい書籍も多いので、気をつけていただきたいです。「○○大学教授監修」となっているものもありますが、がんの専門医でもない医師の監修であったりすることもありますので、肩書きのみを信じてしまうのも気をつけてほしいところです。
書籍や雑誌の中には販売部数を伸ばすために、センセーショナルな話題を扱ったものも多く、話題性が重要で玉石混淆なため、どれが信頼できるか素人では判断なかなか判断できません。
信頼できないがん情報の見分け方
インターネットでも書籍や雑誌と似たような状況があり、「〇〇でがんが消えた」など、患者さんにとって心惹かれる情報を目にすることもあるでしょう。
では、これは信頼できない情報だ、というのをどう判断すればよいのでしょうか。 いくつか基準となるものを挙げてみましょう。
・科学的根拠に基づいた情報ではない
・標準治療を否定したり、保険のきかない高額で特殊な治療法を勧めたりしている
・「どのがんにも効きます」などの文言が使われている
・個人の経験談や少数の治療成績を強調している
・実際の患者さんへの効果を示す確率が低い、細胞実験レベルのデータだけを根拠にしている
・予防に効果があるので治療にも効くと言っている
・免疫力がアップすると言っている
その上で、やはり気になる情報があれば、自分だけで判断せずに、主治医などの信頼できる専門家や、がん相談支援センターの相談員などに確認することが大切です。
【参考】
『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療 』(ダイヤモンド社)
国立がん研究センターがん対策情報センターの「がん情報サービス」(外部サイト)
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- 監修者
- 勝俣 範之
- 医師・がん薬物療法専門医 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授
1963年山梨県富士吉田市生まれ。1988年富山医科薬科大学医学部卒業後、徳洲会病院で内科研修、国立がんセンター(現:国立がん研究センター中央病院)で、レジデント、チーフレジデント、内科スタッフ、医長を歴任。腫瘍内科学の推進、啓発、教育に従事。研究面では、婦人科がん、乳がんの薬物療法の開発、臨床試験に携わる。2011年10月より、20年間務めた国立がん研究センター中央病院を退職し、日本医科大学武蔵小杉病院で、腫瘍内科を立ち上げた。診療・教育・研究の他、がんサバイバー支援にも積極的に取り組んでいて、正しいがん情報の普及を目指して、ブログ、ツイッター、フェイスブックを通し、情報発信している。近著に「医療否定本の嘘」(扶桑社刊)、「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社刊)がある。 所属学会:日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本内科学会、American Society of Clinical Oncology