※本記事は、患者さんの体験談をもとに作成しています。本文中に具体的な病状や治療法なども出てきますが、あくまでも個人の例であり、病状や、治療効果は個人個人で差がありますので、すべての患者さんへ適応できる状況、効果を示すものではないことを了承ください。
1. 過酷な造血細胞移植中の入院生活
ドナーになれる条件を満たすような家族がいなかったため、分子標的薬による治療をしながら、条件のあった骨髄バンクのドナーさんからの移植を調整してもらいました。その結果移植を受けることが決まりました。移植に関しては医師や薬剤師などから説明があり、自分でも治療内容について調べて副作用もある治療だということを認識しました。
移植治療によって免疫力が極端に減ってしまうため、無菌室という感染症を予防するために隔離された部屋に入りました。まずCLL の細胞を減らすための大量の抗癌剤と放射線照射を組み合わせた前処置という治療を受けました。前処置を受けてからは食欲不振などの副作用により食事をとることが難しくなり、栄養点滴を投与することになりました。
前処置が終わったあとに造血幹細胞の移植を受けました。移植を受けた日から頭痛が続くようになり、痛み止めを使用して症状を緩和させることになりました。他にも高熱の症状が続いたことを覚えています。事前に調べて一番心配していた口内炎は幸いにしてあまり強くは出ませんでした。
移植を受けて1 カ月程度でドナーさんの細胞が増えてきて、好中球という細胞の数が基準の値を超えたため無菌室から一般病床に移ることができました。そのころから頭痛や発熱、食欲不振などの症状は徐々に改善してきたため、移植を受けてから50 日程度で退院することができました。
2. 退院してからも続くGVHD という副作用
退院した2 週間後に突然食欲がなくなってしまいました。食事がとれないことで体重が減少し、体力や筋力が落ちました。病院を受診したところ消化管の移植片対宿主病(GVHD)というドナーさんの細胞が自分の体を攻撃する病気と診断されました。入院したうえで免疫抑制剤による治療をうけて、症状はよくなり2 週間で退院することができました。
消化管のGVHD がよくなってからは、移植開始後から飲んでいるGVHD 予防のための免疫抑制剤や消化管のGVHD に対して処方された免疫抑制剤は徐々に減らしていきました。移植を受けて半年で免疫抑制剤は一旦終了となりました。しかし免疫抑制剤をやめたあとから肝臓の数値が悪くなり、肝臓のGVHD と診断されました。もともと飲んでいたものと別の免疫抑制剤で治療を受けましたが効果がなかったため、再度入院して消化管GVHD の時に処方された免疫抑制剤で治療を受けました。すると肝臓の数値は徐々に良くなりましたが、免疫抑制剤の副作用で筋力が落ちてしまい、歩くのに杖を突くことが必要なほどになってしまいました。またその他に、軽度の糖尿病や睡眠障害も発症しました。GVHD と免疫抑制剤の治療のために合計2 か月の入院が必要でした。
その後一定の期間を置いて、今度は息がしづらいと感じるほど咳が出るようになりました。そちらの原因を特定するのには時間がかかり、肺のGVHD の症状と判断されてから免疫抑制剤の量を増やしてもらって咳の症状はよくなりました。しかし息切れの症状が治療後も残っています。
3. CLL は落ち着いているが、いつまでも消えない不安
GVHD がまた起こってしまう危険性があることから現在も免疫抑制剤を飲んでいます。そのため免疫抑制剤による副作用は続いていて、糖尿病や不眠に対する薬はまだ飲み続けています。また筋力が落ちており、歩行には杖を使っています。風邪や胃腸炎などの感染症にかかりやすく、症状が強く出ることもあります。そのため、回復まで1 週間ほど寝て過ごすことがあり、その間に体力が落ちてしまうことがあります。
CLL に関しては幸いにして移植を受けてから4 年以上(※インタビュー実施時点より)が経過していますが完全寛解を維持することができています。しかしまた再発してしまうかもしれないという不安は払しょくできていません。またGVHD もいつ症状が悪くなるかわからないと思っています。
検査のための入院治療を受けてから休職していましたが、治療が長引いている影響で移植治療を受けた後に退職しました。現在は障害年金の給付金と所得保障保険の保険金で生計を立てていますが、いつまで給付を受け取れるのか不安を感じながら過ごしています。