新しい会社でフルタイム勤務。新規事業の立ち上げに参画
予想よりも早く、フルタイムで働く機会が訪れました。友人の会社を週3日、1日8時間のペースで手伝うことで働くことへの手応えを再び感じ始めていたところに、ちょうど別の友人から「ある会社で新規事業をやるみたいだけど、お前どうだ?」と話をもらったんです。
もともとゼロから事業を立ち上げることにやりがいを感じる性格。しかも、具体的な仕事内容を聞いたところ、これまでの経験も活かせるとのことで、社会復帰にはちょうどいい仕事かもしれないと応募することにしました。
面接の際には、がんに罹患したこと、手術後の後遺症で前職を辞めた経緯を包み隠さず説明しました。面接官はこれといって驚く様子もなく、後遺症についても深く掘り下げることもありませんでした。
無事採用が決まり、5月から新しい会社で働くことに。もう一度表舞台に立てる可能性が生まれたことは本当に有難かったです。
入社後は後遺症についてオープンに話した。排便に関しては工夫も
前職の反省を活かして、入社後はがんを経験したこと、後遺症で排ガスや排便で問題を抱えていることを職場でオープンに話すようにしました。おかげで周囲からの理解を得やすくなり、仕事を円滑に進めることができました。メンバーの積極的な協力と同時に、変な気遣いがなかったことは、仕事を行ううえで大変助かりました。
排ガス、排便のコントロールは今もあまり変わっていません。がん罹患から10年を経過した現在でもコントロールはできず、年に1、2回はどうしても失敗をすることがあります。
ただ、そのような失敗を減らすために排便に関しては工夫をしています。例えば、自分がよく使用する駅などの公共施設、お店などどこにトイレがあるのか把握して何かあれば一直線に向えるようにしました。
また、移動中にどうしてももよおしてしまうことがあるので、集合場所には早めに到着できるようスケジュールを組むこともありました。大きな用事がある場合には、下剤なども活用しつつ、前もって強制的に排便をして備えました。
体力だけでなく気力も重要と再確認した
がんに罹患する前は、完全な仕事人間でした。ただ、がんに罹患したことで考え方が大きく変化。健康の大切さに改めて気づかされ、まずは健康第一と考えるようになりました。仕事はあくまで、健康という土台があってこそ集中できるものなのだと思わされましたね。
自分自身の体と向き合う上で再認識したのは、体力だけでなく気力も重要であるということです。体力と気力が車の両輪のような関係にあることも理解しました。もともと病気とは無縁な人生を送ってきたので、健康だったときには気づかなかったことが沢山あるんだなと思いましたね。
がんに罹患したことで、罹患前に思い描いていたキャリアとは異なる道を歩むことになりました。だからといって、キャリアが大きく落ち込んだということもありませんし、むしろ新たな視野が広がったようにように感じています。
もちろんがん種やステージによって、それぞれ置かれている環境は違うと思いますし、あくまでこれは私個人の体験に過ぎません。いつ何が起きるかわからないのが人生。その中で何を大事にし、どのように生きていくか。がんに罹患したことで気付かされたことは決して少なくなかったと思っています。