フリーランスだからこそ、社会保障について人一倍考えていた
20代半ばから現在に至るまでの30年以上、私はフリーランスの物書きとして生計を立ててきました。
フリーランスになった背景には自分の性格が大きく起因しています。実は昔から毎日同じ時間に同じ場所に行くような決まりきった生活がとても苦手。私にとってはフリーランスという自由な働き方が、性格的な面で会社勤めよりも合っていました。
フリーランスは会社員と違い、どこで働いてもいいし、いつ働いてもいい。それこそ全く働かなくてもいい。だからこそ、仕事をした分だけ収入にも反映されますが、逆もまたしかり。なにもしなければ収入は当然ゼロ。全ては自分次第です。
リスクがあることは承知の上でした。仮に働けなくなっても会社勤めの人たちのように会社には守ってもらえません。何が起きても自分の身は自分で守らなければいけない。誰にも甘えられない立場と分かっていたので、結婚していた頃は保険にも入っていました。何かあってもパートナーだけは守れるように、フリーランスだからこそ、社会保障については人一倍考えていました。
想像以上に厳しかった。フリーランスという立場での罹患
その後、結婚生活は長くは続かず、妻とは離婚。それを機に保険も解約しました。当時は健康そのものでしたし、仮に病気になったとしても自分一人ならなんとかなるだろうと、契約の継続は不要と判断したのです。
でもそれから、C型肝炎になり前立腺がんに罹患。フリーランスという立場で大きな病気を立て続けに患うと大変です。会社員と違って有給も休職もありませんし、人事や労務といった相談できる相手もいない。何かあったら自分で全てやらなければいけない。頭では理解できていましたが、実際にその状況に立たされると想像以上に厳しいものがありました。
だからといって会社勤めをしていれば良かったとかはないですね。そもそもその働き方が自分には向いていませんし、フリーランスでなければ今の仕事も続いていなかったと思います。
治療中は仕事を半分に。治療後は反動で仕事を増やした
治療中は人と会う機会を減らしたので、仕事量も大幅に減りました。おそらく通常時の半分くらいまで減ったと思います。治療を最優先に考え、家賃と日々の食事、最低限の生活さえできればいいと思い、継続案件に注力、新規案件の受付を停止しました。
ただ、治療が終わった後、おとなしくしていたことの反動もあったのか、仕事量に満足できなくなりました。また、それまでは自分の専門分野に特化して仕事をしていましたが、いつ何が起きても悔いが残らないように、さまざまな仕事を受けましたし、それまで以上に人にも積極的に会いました。
人間関係でも仕事でも、それまでは「狭く深く」を心がけていましたが、罹患後は「広く浅く」を意識するようになりました。
治療後は収入がアップ。生活スタイルが変わり1人飲みも
今までの仕事量を10とすると、治療をしていた2ヶ月が5、治療を終えた6〜7月以降は15といった感じです。治療中には減ってしまった収入も、放射線治療後は罹患前より増えました。ジャンルを問わず何でも引き受けるようになったのが大きいです。
罹患後に仕事のパフォーマンスが落ちなかったどころか、逆に視野が広がったのは意外でした。きっと罹患していなければ「狭く深く」のスタンスは変わっていなかったでしょうし、収入も増えなかったと思います。罹患して良かったとは全く思いませんが、罹患したことによって良い意味で今までと違う人生になったなという実感はあります。
他の変化と言えば、お酒の飲み方でしょうか。罹患後はよく1人で飲みに行くようになりました。最近は行きつけの飲み屋街で何件かハシゴして帰る生活。基本的には終電で帰ります。盛り上がって終電を逃すこともありますが、それは本当にたまにです。年齢的に始発を待つのも難しいので、そういうときはタクシーに乗りますが、やはりお金が掛かりますからね。ですから今は、1、2時間でサクッと飲んで帰るといった生活を送っています。