試験開腹。腫瘤は精巣腫瘍の転移だった
東京の病院に転院した時点では、悪性リンパ腫の可能性がきわめて高いという状況、あくまでがんであるということしか分かっていませんでした。治療する科を決めるためにも試験開腹で病巣を特定する必要性があったんです。12月8日に入院、一通りの術前診断を受けた後、13日に外科で開腹手術を受けました。
開腹手術の内容は、全身麻酔でおへその辺りを少しだけ切って器具を差し込み、病巣部の細胞を採って病理組織診断をするといったもの。約1時間程度の短い時間で終わりました。検査の結果、原発は精巣腫瘍。腹部大動脈の腫瘤は精巣腫瘍が転移したものでした。
とはいえ私の場合は既に転移していたので、大量化学療法を行う必要がありました。同じ病気に罹患した知り合いが手術のみだったので、化学療法は想定外。標準治療で4〜5クールもあり、先生からは「薬が合わなければ、その都度変えて様子をみる」と言われたので、1年近くは入院生活が続くことも覚悟しました。
手術後すぐに退院。年末年始を自宅で過ごす
本番の手術を12月24日に無事終えると、早速翌日から術部の癒着を防ぐため、病院内を歩いていました。術後はとにかく何をするにも痛くて仕方なかったです。驚いたのは手術2日後の退院。先生から「お正月ですからIさんも家に帰りましょう。痛いのはどこにいても一緒。痛み止めを出しておきますから」と半ば強引に自宅に戻るよう促されました。まだ出血もあり痛みも残っていたのに、先生は本当に無茶なこと言うなあと、ちょっと笑っちゃいました。
退院をして自宅に戻ったときはまだ痛みがあり、家の前で車から降りる際も一苦労。なんとか家の中に入り、自分の布団に潜り込んだと思ったら、今度は布団の中から出られない。トイレに行くにも這って出てくるような状態でした。私があまりにも痛みに苦しんでいたため、今まであっけらかんとしていた妻でさえ「あまりにも可哀想で見ていられなかった」と。妻とは普段から淡々とした事務連絡的なやりとりが多いので、正直他に何を言われたかはあまり覚えていないのですが、その中でもこの言葉はとても印象に残っています。
逆に術後良かった点を挙げるとすれば、食事制限がなかったことでしょうか。内臓の病気ではなかったので何でも食べることができました。お正月だったので普通にお餅も食べましたよ。
がんを経験された個人の方のお話をもとに構成しており、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません。