本当にこのままでいい?他の世界も見てみたい気持ちに
社員が全部で十数名、私は会社にとって10年ぶりの新卒。一番年齢の近い先輩も8つ上で、みんな私のことをすごく大事にしてくれていました。
一方で若いからという理由で、色んなことを大目に見てもらったりかばってもらったりすることも多く、危機感もありました。この環境でずっと過ごしていたら、好奇心とか向上心とか働く上で必要な色んなものが無くなってしまうのではないかと。
昔だったら危機感を抱くこともなかったかもしれません。待遇も良かったので転職をしない選択肢もあったはずです。むしろ選択するという意識もなく、ただ何も考えずそのまま生きていたと思います。
ただがんに罹患したことで、できればもっと他の世界も見てみたいという気持ちになりました。せっかくだから好きなことやってみようと考えるようになったんです。
がん罹患経験。履歴書に書くかどうか
転職活動で悩むことは特別ありませんでした。むしろ、転職活動自体が初めての経験だったので、その点での難しさはあったものの、がんに罹患したことによるハンデは特に感じませんでした。
一点悩んだことがあるとすれば、転職活動をする中で、履歴書や職務経歴書などの書類に、がんに罹患したことを記載するかどうか。私の場合は罹患前よりもむしろ健康になってる感覚があったので、もし書いたことによって落とされるのであれば、納得いかないなと。そういう思いもあったので、私は罹患したことについては書きませんでした。
面接まで進んだ場合に、直接対面で身体や病気のことについて聞かれたら言えばいいし、聞かれなければ言う必要はないと考えました。実際に私の場合は、がんについて話すことなく今の会社に転職しました。
好きなものに関われる仕事に転職。社長へのカミングアウト
転職先はキャラクターグッズなどの企画制作を行っている会社。元々テーマパークに遊びに行くのが好きでキャラクターグッズを集めるのが大好きだったんです。がんに罹患したことで自分の人生に向き合い直し、自分のしたいことを率直に考えられるようになりました。好きなものに関わる仕事に就くことができたことで、日々やりがいを感じています。
今の職場では入社後にがん罹患経験を社長に告げました。仕事終わりの帰り道、たまたま社長と一緒になったのですが、健康の話題になり「私、実は昔がんに罹ったことがあって」と言ったんです。社長は「えっ?20代だよね?」って驚いていました。
なんで入社前に言わなかったんだ、といった責めるようなことは全くなかったですし、むしろ大変だったねと、気遣う言葉をいただけたので話して良かったですね。
がんに罹患したことで、自分の仕事に向き合えるように
前職もがんに理解のある職場でしたが、今の職場も変わらず恵まれた環境で働かせてもらっています。平日に通院する場合でも、遠慮なく有給を使っていいよと言われていますし、実際お言葉に甘えることもあります。
仕事内容にも職場にも満足しているので次の転職は今のところは考えていませんが、ライフステージの変化やまた他に興味のあるテーマに出合えたときには転職するかもしれません。
罹患前にあった、ずっとこのままでいいかなという考え方はなくなってしまいましたね。転職の直接的な理由はがんとは全く関係ありませんが、がんに罹患していなかったら転職をしようとは思わなかったはず。私の場合、がんをきっかけに自分の仕事や働き方にちゃんと向き合えるようになりました。