がんに罹患した経験を伝えたい。自分にはその使命があると感じた
職場復帰のタイミングで、自分の罹患体験をまとめはじめました。自分ががんに罹患した経験を誰かに伝えることは、今後がんに罹患する可能性がある誰かやその家族の役に立つのではないかと思ったんです。
私自身、会社の方針もあってこれまでに研修や講演でがん経験者の話を聞く機会が多々ありました。その経験がなければ、私も医師からがんを宣告されたときに冷静ではいられなかったかもしれません。
がんの罹患を防ぐことはできないけれども、がんに罹患した後にどう対処すべきかは知識として持っておくことができます。私個人としては、こういう準備が役に立ちますよ、相談するならここがいいですよ、という経験に基づいた事実をお伝えできますし、これらの情報は知っておいて損はありません。私自身、自分ががんになるとは思っていませんでしたし、いざという時のために備えておくべきだと感じています。
私はがんに罹患したことで、改めてがんについて知っておくことの意義を感じましたし、知ることの重要性を自分ごととして捉えることができました。端的に言うと、自分にはこの経験を伝えるべき使命があると感じましたね。
取引先から講演依頼。若い世代には、いとこの話も
2015年あたりからお話をさせていただく機会が増えました。もともと営業職として社外の方とコミュニケーションを取ることを得意としていたので、内勤職に移った私としては、講演という形であったとしても、外部の方と接する機会を持てたことは大変ありがたかったです。
現在は取引先からの講演依頼もあります。目的はがん検診の受診率の向上や罹患者と上司との関係性向上など。参加される方の中には若い方もいるので、場合によっては自分のいとこの話もします。彼は23歳でがんに罹患して24歳で亡くなった。この現実を伝えるのは簡単なことではありませんが、どんな年代でもリスクはあるということを知って欲しいという思いから積極的に伝えるようにしています。
地元に戻れたからこそ大切にしていきたい、家族のつながり
私にとってがんに罹患したことは、家族のあり方を見直すいい機会にもなりました。夫として父として、家族生活を営んでいましたが、もっと大きな枠組み、それこそ両親や弟夫婦や弟の子どもたちを含めた家族という意味では、まだまだできることがあるなと思わされました。
いとこの件も非常に大きくて、両親も高齢ですし、私ががんに罹患したことも含め、家族みんないつどうなるかわからない。周囲からは、もっとこうしておけば良かったとか、もっと会っておけば良かったという話を聞きますし、後悔はしたくないなと。
そういう思いから、今は住まいを実家の近くに移しました。月に一度は弟家族を含めて両親の家に集まり、家族全員で食事もしています。弟家族には子どもが3人いるので集まるときはすごく賑やかな感じ。両親はいつも喜んでいます。
せっかく大阪に戻ってくることができたので、今まであまり意識していなかった親孝行や家族付き合い、これらはいつまでもできるものではないので、今後の人生では特に大切にしていきたいですね。