収入減少も、パート収入・年金で生活は安定
がんの罹患前後で、2つの変化がありました。1つは、仕事・収入面。もう1つは、健康への意識です。
治療と就労を両立させるために、働き方をパートタイムに変えて以来、現在も同じ職場で同じ働き方をしています。仕事内容は正社員時代と大きく変わっていませんが、働き方を変えたことで、一日の仕事量が減り、時間にある程度自由が効くようになりました。
他方で、収入は減りました。幸い私は、55歳の時に勤めていた会社を早期退職、その時に入った退職金の一部ありました。また、我々は厚生年金の受給年齢が60歳から65歳に切り替わる世代ですが、私は現在「特別支給の老齢厚生年金」(日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金について」)を受け取っています。これは申請手続きをして条件を満たせば、65歳でなくても実質的に年金を受け取ることができる制度です。
現在は、退職金の一部と年金、パートタイムで働いたお給料で生活をしています。幸い子どもたちは社会人としてすでに自立しています。夫婦二人だけの生活が営めればいいので、収入は減りましたが日々の生活をまかなえています。
積極的に健康診断を受けるようになった
健康面での変化は、積極的に健康診断を受けるようになりました。がん検診も継続して受診しています。
がんに罹患するまで大病を患ったことがなく、健康診断については消極的な気持ちでした。ただ、今回がんに罹患したことで、がん以外の疾病に対しても気をつけるようになりました。
年齢的にも、自分の周りでがんに罹患する方が増えてきました。肺がん、食道がんや急性白血病で亡くなった友人、家内の友人も昨年、子宮がんに罹患して入院。自分の再発、転移リスクはもちろんのこと、家族や大切な友人にもがん検診の大切さを伝えるようになりました。
お金周りの制度はもっと認知されて欲しい
がん検診以外で友人に伝えていることは高額療養費制度や限度額適用認定証制度といったお金周りの制度の話です。
胃がん手術を受けるために入院手続きをした際、病院の案内で初めてそのような制度を知りました。
4月に働き方をパートタイムに変更、保険も国民保険に切り替えていました。そのことも伝えると、市役所の担当課へ行くか、会社の人事労務担当者に相談すれば、詳しい手続きを教えてもらえるはずと案内されました。病院の担当者の話をもとに、すぐに申請しました。些細なことですが、このような案内があったことも、病院に対して信頼感を持てた一つの要因となりました。
高額療養費や限度額適用認定証を知らない人も多いかと思います。患者としてはこういった制度の案内を事前にしてもらえるとすごく助かりますし、知って損することはないので、もっと認知されればいいなと感じています。
性の話も赤裸々に。親身になってくれた主治医に感謝
信頼できる医師に巡り会うことも大切です。
前立腺がんの場合、治療によってはED(勃起障害)を誘発することがあります。罹患前は知識としてEDについて知っていても、あまりピンとは来ていませんでした。ただ、前立腺がんの全摘手術を行うことで、EDになる可能性が十分出てきたときに今後のQOLについて考えました。私の場合は年齢的にもEDより後遺症の方がQOLに大きな影響がありました。
QOLについては、主治医と相談し赤裸々な話をしました。当初は、治療に関わることとはいえ、突っ込んで性の話をすることに抵抗感がありました。しかし、主治医が自分の話に耳を傾けてくれ、受け入れてくれることがわかってからはかなり腹を割って話ができました。信頼関係を結べたからこそできた話です。
ただ治療を受けるだけでなく、治療後の身体と向き合っていかなければならない中、自身のQOLをどう維持していくのかは気になります。QOLまで考えたうえで、納得した治療を受けたい。今振り返ってみて、自分が受けた治療は、自分にとって最適だったと納得しています。