抗がん剤治療の薬について第三者の意見を仰いだ
抗がん剤治療で一つだけ残念だったことは、薬の効果や副作用についての説明です。僕はデータを元にした説明を希望していたのですが医師からはそういった説明は特になく、納得ができませんでした。
そこで改めて相談サービスを使ってカウンセラーの方と面談、妻と一緒に薬の副作用や効果などについて教えてもらいました。そのときいただいた資料に、再発予防の効果が15%あると書かれていました。「たったの15%か……」と感じたのをよく覚えています。ただ少しでも再発のリスクが下がるのであればやる価値はあるし、副作用の詳しい説明もしてもらえたので、抗がん剤治療に対して前向きな気持ちになりました。
抗がん剤治療がスタート、副作用に耐える日々
1クール目の抗がん剤は入院をして、点滴を投与。点滴中はとにかく眠く、ずっと病室で寝ていました。他にも食欲不振や胃のむかつきのような症状もありました。
他にも抗がん剤の副作用かはわからないのですが、胸に鉄板を入れたような重い痛みと、先ほどお話ししたピリピリするような胸の痛みが強く出ました。それを抑えるために薬を処方してもらったのですが、薬疹が出てしまったので服用はすぐに中止。その不快な症状にひたすら耐えるしかありませんでした。起きている間は常にピリピリとした痛みがあって、それが2〜3ヶ月は続いていたと思います。
適応障害となり抗うつ剤の服用を開始
抗がん剤の副作用は嘔吐のイメージが強かったので、人に迷惑をかけるのが嫌だったのと、他の人が吐く姿を見ることにも抵抗があったので、個室を希望しました。入院してからは他の患者さんと話す機会もないまま副作用に耐える毎日。いよいよがんという現実を直視せざるを得なくなり、一気に気持ちが落ち込んでしまいました。
抗がん剤治療の1クール目のある日、急に一人で個室にいることが怖くなってしまったんです。一人で病室にいるのがいたたまれなくなり、できるだけ人だかりがある場所にいたいと、見舞い客などが集まる待合室で夕方まで過ごしました。自分でも様子がおかしいと思い、夕方過ぎに病室に戻った時に看護師さんに相談、夜は睡眠薬を飲んで早々に寝ました。睡眠薬を飲んだのはこの日が生まれて初めて。翌日に昨日のことを担当医に相談すると、精神科の受診をすすめられ、結果、適応障害の診断が下りました。その日からは気持ちの落ち込みをコントロールするために、抗うつ剤も服用。
これは抗がん剤治療が全て終わった後に妻から教えてもらったことなのですが、妻は僕のいないところで医師から「病室にナイフのような刃物を置かないでほしい」「家族の方もなるべく多く病室に来てほしい」と言われていたそうです。どうやらがん患者の中には突発的に死を選ばれる方も少なくないようで、医師は僕のことも心配していた様子。他にも「がん患者の精神状態は本当に不安定で特別です」とも忠告されていたようで、妻は僕に対してかなり気遣ってくれていたんだなと改めて気付きましたね。
2011年、札幌に単身赴任中に左肺がんの告知を受ける。以後、2013年に膵臓がん、2017年に右肺がんと3度の原発性がんを経験。闘病生活を支えてくれたのは、人とのつながり。がん患者の体験談や闘病記は、この痛みを感じているのは自分だけではないことを、職場復帰は自分の存在を受け入れてくれる居場所があることを教えてくれた。