「インターネットは見過ぎないように」医師に忠告されるも止められなかったウェブ検索
ついネット上のネガティブな情報を調べてしまう負のスパイラル
職場に医療従事者の同僚がいたので、特に情報収集で困ったことはありませんでした。病院選びも比較的迷わずスムーズに決断できたと思います。ただ、告知を受けた前後はネットで自分が罹患しているがんのことを調べたのですが、これは一長一短がありました。
国立がん研究センターが出している「がん情報サービス」は優れたサイトで大変参考になりました。一方で、「がん情報サービス」に書かれていない情報を調べるため、真偽不明のあやしいサイトを閲覧することもありました。
私は、どうしてもステージごとの生存率情報などが気になってしまい、不確かな情報を掲載しているサイトですら食い入るように見ていました。ネガティブな情報は意識に残りやすいもの。どうしても気になり再び検索してしまう…。頭ではわかっていながらも負のスパイラルに陥っていました。
医療従事者の同僚や医師からも「ネットは見過ぎないように」と説明を受けていましたし、ネット上で信頼できる情報と怪しい情報の区別はできてはいたのですが、なかなかそのような検索を止められませんでした。
がんに罹患したことをオープンに伝える。ただ誰にどこまで伝えるかは難しい
治療をすれば病巣が消滅し、社会復帰の見込みがある。であれば、治療後の交友関係を円滑にするためにも友人に報告をしようと考えました。私自身はもともと物事をオープンにするタイプの人間。会社を休職して、治療に入ってしまえば連絡を取ることができなくなるだろうと考え、SNSでがんに罹患したことを報告しました。また、ブログを立ち上げてそちらでオープンに自身の状況を伝えることにしました。
ただ、これには少し後悔もあって。余裕があれば大切な人、一人ひとり順番に報告したかったのですが、早く治療に入らなければいけないと切迫した状況の中でなかなかそのような時間的、心的余裕はありませんでした。
親や、仕事で迷惑をかけざるを得ない同僚、上司のような人以外にはSNSとブログで一斉に報告。そのため様々な反応があり、「応援しているよ」と暖かい言葉をかけてくれる方がいる一方で、結果的に動揺させてしまった友人も。
誰にどこまで何を伝えるのかは、とても難しい問題。ただ、当時の自分を振り返ってみるとそこまで考える余裕はとてもありませんでした。
オープンな姿勢がマイナスに働いたことも。がん罹患者にどう寄り添うべきか考えるきっかけになった
オープンに自身の状況を伝えることがマイナスに働いたこともありました。家族にがん罹患者がいる人や独自の専門知識を持っている人から、自分の考え方を押しつけられる場面があったんです。病院や本を勧められるくらいであればありがたかったものの、自分の言うことを聞けばきっと治る、一度会って話をしようと言ってくる方がいました。
率直に言って、そのような時間がないからこそSNSやブログを活用して報告しているわけで。自分自身中咽頭がんステージⅣAで、転移もある。急いで治療に入らなければいけない状況下で、そういった方とコミュニケーションを取る時間も心の余裕もありませんでした。
ただ、この時の経験はがん罹患者にどのように寄り添うべきなのかということを考えるきっかけになりました。現在、がん罹患の体験を話す機会が多々あるのですが、その際にはがん罹患者への寄り添い、接し方について重点的に話すようにしています。
2017年、転職1年半の時期に咽頭がんが発覚。周囲の支えで無事職場復帰。がんに罹患した経験を治療中から積極的に発信する。「ピンチはチャンス」の言葉を胸に新たなキャリアパスを模索。