抗がん剤を終えたタイミングで主治医に復職のタイミングを相談しました。
相談したのが7月頃。早ければ8月から職場復帰することもできたのですが、主治医からはまだ暑いから涼しくなってから戻った方がいいよと、秋頃の復職を勧められました。
暑いと疲れやすくなるからという主治医の言葉に甘え、職場には秋頃、復職を申し出ました。それから産業医と面談、私は時差通勤を希望しましたが、産業医から時短勤務を提案されました。
傷病休暇について教えていただいたのもその時です。私は、育児や介護の最中の社員のみが傷病休暇を利用できると思っていました。傷病中の人も3ヶ月利用できると教わり、それを10月から利用することになったのです。
つい先を急ぎがちな私に産業医は「人生は持ちつ持たれつ。会社という一つの船に乗り合わせ、今まであなたの働きが支えて来た人もいるのだから、今少しばかり頼ることは決して悪いことではないし、すっかり良くなってまた返せばいいと、少し気楽に思ってください」とも。
再スタートに、とても有り難い言葉でした。
通常勤務に復帰するも、3月から新型コロナの影響で自宅勤務
手術からちょうど1年経った2020年1月、やっと通常勤務の形態に戻すことが出来ました。
ところがその後、3月から新型コロナウイルスの影響で、自宅勤務に移行。復職して1年ほどたちましたが、現在はリモートワークがメインで、会社には週1回行ってる、という感じです。
1〜3月は出社できることが嬉しかったです。自宅療養中は人に会う機会もあまりありませんでしたし、職場で同僚と話せることが単純に楽しかった。たしかに毎日の通勤は多少疲労につながる部分はありましたが、リモートワークに移行したのは少し残念ではありますね。
がんに罹患したことを人には言いたくなかった
一方で、がんに罹患したことは、言わなければならない人を除き、ほとんどの人には伝えませんでした。普段親しくしている職場の同僚に対しても休むことは伝えても、病名は公開していません。
手術部位の説明、つまり子宮がないことをあまり人に言いたくない、という気持ちもあります。それでも「追加治療で休職」「復職したらベリーショートヘアになっていた」となれば、自ら言わずとも、ある程度周囲には知れているでしょうけれど。
また、個人的な人間関係の話になりますが、甲状腺がんになった友達がいたんです。彼女はとても繊細な人で、「私はがんになってしまって大変、すごくつらい……」とふさぎ込み、心療内科で鬱と診断を受け、今に至っています。それを間近で見て、彼女にとってそれほどに辛かったのかと気持ちを寄せつつも、私は私なりの方法でどんなときも前を向くことを諦めたくない、と思うようになったのです。勿論、今日より明日が絶対明るい保証などないことくらいわかっています。しかし、がんになっても気持ちだけは常に歩き出していたいと、そう思う自由まで、自分に捨てさせたくはない。
そのために、余計な縛り、先入観に繋がるものを他人に見せたくはないのです。
がんに対する誤解。先入観を捨てて向き合って欲しい
ある共通の友人は、その甲状腺がんの彼女から「私はステージⅢだから……」と、もう治る見込みがないといった話を聞いたらしく、がんに罹患してかわいそうだと同情しているようでした。
ひょっとしたら彼女は、慰められたかったから話したのかもしれませんが、私自身は誰からもそういった感情を寄せられたくはありません。ネガティブなことにとらわれるよりも、私は「ステージⅢだけど……」から始めたい。「治すことを考えよう派」なのです。
この一件もあり、がんに罹患した人はかわいそうな人だと、罹患者への印象をひと括りにされたくはないなと、改めて感じました。罹患後のがんの捉え方、周囲からどう見られたいか、それらはがんに罹患しているからといって、みんながみんな同じ考え方ではありません。私のような人もいれば、彼女のような人もいる。人それぞれです。
一方で、彼女や共通の友人のような考え方がまだまだ根強い背景には、がんは治らない病気という誤解が世の中に広まっているからではないでしょうか。罹患者も罹患者を周りで支える人も、がんは治らないという先入観を一度捨ててみて欲しいですね。繰り返しになりますが、明るい回答が得られる保証ばかりでないことは重々わかっています。けれど、医学は日進月歩です。受けられる治療、自分が自分に出来ることは進化しているはずです。
きちんとお医者さんと話し合い、治療法を決めて欲しい。がんだからとひたすら後ろ向きに恐れるのではなく、まずは向き合う。
それが一番大事なのではないかと私は思います。